テレビゲームに発明者はいない?
1997年11月25日初版発行『なりたい!ゲームクリエイター』(大栄出版)より


テレビゲームは自然発生的、同時発生的に生まれたもので、歴史にその中を残すような発明者はいないと本文では説明した。これについて、もう少し深く掘り下げてみたい。
「マンハッタン計画」を御存知だろうか? 第二次世界大戦勃発後、アメリカでは極秘裏に合衆国中から優秀な科学者を招集し、原子力爆弾を開発させるプロジェクトが組まれた。それが「マンハッタン計画」である。開戦当時、まだコーネル大学の院生であった若きウィリー・ビギンボーサム博士は「マンハッタン計画」に参加、原爆開発の電子部門を担当したという。実は、その彼がテレビゲームの発明者だと言われている。
終戦後、軍を離れたビギンボーサム博士は、ニューヨーク州のブルックヘイブン国立研究所に在籍することになる。彼は、「研究所を訪れる見学者がより化学に親しめるように」、1958年、テレビゲームを発明したのだ。
そのゲームは、5インチサイズのオシロスコープを使い、テニスを連想させるゲームだったという。しかし彼は、自分が発明したこのテレビゲームに関して一切特許を申請しなかった。ウィリー・ビギンボーサム博士は、当時でも20以上の特許を持つ発明家として有名な人物だったというのに。その彼がなぜ、ことゲームに関してのみ特許を取ろうとしなかったのか。後年、彼は核拡散防止の調停活動に興じるなど、数々の平和啓蒙活動を積極的に行っている。
ゲームは当初個人の作品ではなく、学生や学者たちの共有財産だった。そんな幸福な事実は、平和を願うある科学者の慧眼と肝要な心を雄弁に物語ってはいないだろうか。
だからそこ、テレビゲームに発明者はいないのである。



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