まぶしい!
肌に突き刺さった小さな刺のような違和感が少し続いて、ゆっくりと覚醒し始める。
めずらしく、目覚し時計がけたたましく鳴り響く前に目が覚めた。
理由は明白。昨夜、カーテンを引かずに寝てしまったためだ。半分うつらうつらしながら、得をしたような損をしたような、複雑な気分に捕らわれている。
頭の片隅には、もう一度寝直ししようかなんて、甘い誘惑もあったりして。
「あ〜あ、今日もまた1日が始まるのか。月曜日は朝礼があるから、いつもより30分も早く出社しなきゃいけないし、午前中に電話しないといけない案件が3本もあるし、明日の会議までに報告書も作成しないと」
などと、声にならないぼやきを続けた。単純にぼやくのが好きな人間なんである。友人達に言わせると、俺の趣味は“ぼやくこと”であるらしい。あんまりさわやかな趣味じゃない。
なんてことを、まだはっきりと覚めきれない頭の中で巡回していたら、隣で人の動く気配がしたて、そこで本当に目が覚めた。
あ、そうそう、昨夜はリカが泊まったんだった(知らない女じゃなくてよかった)。
「おい、起きろ!」
という言葉を、俺は思わず飲み込んだ。

茶色の紙が、陽の光を浴びて暖かそうに輝いていた。おいおい、ずいぶん睫が長いど。
それにしても、こんなに真剣に、こんなに間近でリカのことを眺めたのは初めてだな、と思う。
口が大きいのは気にしていたが、「俺はそこが気に入っている」ということは言いそびれている。
リカはずいぶんと色が白い。ついで、胸と尻もデカい。それもコイツは日々気にしている。「遊んでいるように見られる」らしい。でも、俺はそこも好きなんだけど。白くてフアフアしているリカは、黒くてガリガリの俺とは別の生き物なんだと、抱きしめる度に感じるから。

そっと、起きないようにリカを抱きしめてみた。
信じられないくらい暖かくて柔らかい。そして、確かな重みが俺の中にあった。
朝の光の中、しあわせの白いかたまりが、俺の傍らで静かに息づいているみたいだった。
「さっ、がんばろか!」
なんたか、とっても照れくさくなって、俺はベッドから勢いよく飛び起きる。と同時に、いつも通り目覚まし時計が無神経に鳴り出した。
「うるさいよぉ」
一拍置いて、情けないリカの声が背後から聞こえて、俺は思わず吹き出した。

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