>>ともぞうさんへ
やっほー、元気かい? 僕は元気です。
その後、転職活動はいかがですか?



履き慣れないものを履くと、ホント、ろくなことがない。
ヒールの踵がパックリきれいに取れてしまった。
1万8000円もしたKenneth Coloの靴。日比谷公園で立ち往生だ。
瞬間接着剤でもあれば修理できるんだろうけど、一体誰がそんなものを鞄の中に入れて持ち歩いているというのだろう。
すぐに諦めて、私はそのColoの靴を投げ出した。そういえば昔、
「お前、歩き方がヘンなんだよ」
なんて失礼なことを言った男がいったっけ。
昼下がりの日比谷公園で、私はそんなことをぼんやり考えていた。


>>僕の就職活動は、明日から面接再開です。
がんばって、愛情を注げるような仕事を探したいと思っています。



今年に入って、パソコンをローンで購入して、パソコン通信を始めた。そして、そこで知り合った大学生の男の子となぜか気があって、なぜかメールの交換までやりだして、半年が過ぎた。
“ハニ”ちゃんは、今年で大学4年生で就職活動に忙しい。私は今年28歳で、転職活動に忙しい。


>>この間の面接で、“最近感動したことはなんですか?”と聞かれてしまいました。さて、最近、僕は何に感動しただろう? などと、10秒くらい物思いにふけってしまった。そういう場最近、心の最下層部分までさらけ出して、喜んだこととか、どうにもならんほど悲しんだことってない気がする。ちょっと寂しいかも。


「心の最下層」という一言が、私の心の奥の奥のどこかにゴツンとぶつかって跳ね返り、そして、時間をかけてゆっくりと沈殿していった。


>>いつからかな? 
だいたい自分で自分の底ってわかっているのかな?ってね。
考えてもよくわからない。
なんか最近、僕は少し「考える人」です。/ハニちゃんより



私は、一度大きく伸びして、そして勢いよく立ち上がる。
さて、気を取り直して、履歴書と就職雑誌とそれから超強力瞬間接着剤を買いに行こう。この東京の空の下に、一度も会ったことはないけれど、確かに“ハニ”ちゃんはいる。“ハニ”ちゃんは大学生で男の子だが、私の中の“ハニ”ちゃんには、まだ実体がない。なのに、その心のあり所が、恐ろしく身近に感じることがある。それは実に不思議で、しかも愉快な事実だった。
私は、少々妙な歩き方ながらも、精一杯堂々と日比谷の街に向かって歩き出した。


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